教科指導
帰国・外国人児童生徒対象 2009年5月
 分数の導入場面を考える

なぜ「生活場面」からここまで乖離してきたか

 
ある時期から「分数の導入場面」は変わりました。
それまで「1mのテープを三等分する」場面での導入でしたが、
1mのテープを使わず、1mと≪はした≫のあるテープで導入するようになったのです。
これってなぜ?
これで分かりやすくなったの?

今月はこの問題を考えてみましょう。


以前の「分数」導入場面

どの教科書も以前は次のような場面での導入した。

「1mのテープを同じ長さに3つに分けました。
分けた一つ分の長さは何mと言えばよいでしょうか。」

「問い」が実にシンプルで、子どもたちは何を考えればよいか、分かりやすいですね。
ところが、最近の教科書では次のように
「1mと≪はした≫のあるテープ」で導入しているのです。

模型の自動車を走らせ、走った長さをテープにします。    
そして、それが1mとあと少しあることを確認させます。    
そこで、そのはしたの長さを何mと言えば良いかを尋ねます。

なぜ、こんな回りくどいことをするのでしょうか。

それは、分数が「はした」を表すための手段で、はしたの存在を際立たせるために
わざわざ「1mとあと少し」という場面を作り出し、比較させながら考えさせるように
したからです。                                         

なるほど、分数は1より小さい「はした」の大きさを表すための手段です。 しかし、  
だからと言って、わざわざ1mと「はした」の2つをこのような形で比較させる必要が 
あるでしょうか。このような提示の仕方をすると、次のような二度手間が発生します。

@まず、模型の自動車を走らせるというよけいな場面を提示したあと、テープを
持ち出し、走った長さを測り、「1m以上」あったことを確認させる。     
A次に、「はした」の部分に注目させ、そのはしたの長さを3つ合わせると、  
ちょうど1mのテープと同じ長さになることを伝える。              
Bその上で、このはしたは何mと言えばよいかを尋ねる。             

以前の提示の仕方であれば、最初から「1mのテープを同じ長さに3つに分けた」と
言っているので、上記@とAの説明は不要です。しかも、模型の自動車がどうした
こうしたという妙な場面設定も不要です。(奇妙な場面設定をしているのに、冒頭で
登場したきり、二度と自動車の話は登場しません。何のために非現実的な場面を
提示したのでしょうか?まったく不可思議です。)                    

分数の導入に「はした」の場面を持ち込んだ理由がもう1つあるようです。それは、
「帯分数との関係が明らかになる」というものです。確かに、1mと「はした」があれ
ば、帯分数の世界を表すことができます。しかし、分数を導入する最初のところで
いきなり帯分数を意識させるような場面が必要なのでしょうか。           

数学的に整合性を取ることと、まず社会生活に必要な範囲で分数の概念を正しく
理解させることとは、考える位相が異なります。我々教師がすべきことは、後者で
す。初等教育に携わる教師は、数学的な知識を高めることも大事ですが、本来の
使命を忘れてはいけません。                                

もし、今の教科書の導入方法で理解に苦しんでいる子がいたら、ぜひ「1mのテー
プを同じ長さに3つに分けました。分けた1つ分の長さは何mと言えばいいかな?」
という「単刀直入」版の提示方法で教えてあげてください。              

★以前の教科書をお持ちでない先生は、東京外大のサイトに「単刀直入」版の 
テキストを大蔵流にアレンジして載せてありますので、ご覧になってください。
東京外大のサイトへは「教材・テキスト」のページからアクセスできます。   


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